集客効果を期待してポイントカードを取り入れたのに、経費ばかり掛かって期待したほどの集客に至っていないケースがある一方で、ポイントカードに工夫を凝らすことで、集客と顧客の引き留めが上手くいっているケースもあります。ポイントカードが集客ツールとして役立つためのコツと、ポイントカードが担う本来の役割についてまとめてみました。
財布を太らせる犯人。それがポイントカード
何処へ出かけるのにもショルダーカバンを持ち歩いている私は、吉田カバンの『PORTER』がお気に入り。同じモデルを2回続けて買い、かれこれ10年以上愛用しています。そんなショルダーカバンには財布と予備のメガネが入っているだけなのに、妙にカバンが膨らんでいます。きっと細身体系から、年相応の中年体系へと変わりつつある私に似てきたのか?
つまらない冗談はさておき、そのカバンを膨らませている原因は財布です。札束がびっしり入っているのであれば嬉しいのですが、残念ながら札束ではなく財布が膨らんでいる原因はポイントカード。普段からよく利用するお店のポイントカードもあれば、まったく利用しないお店のポイントカードまで、様々なお店のポイントカードが財布の中で「眠って」います。使わないポイントカードは捨ててしまえばいいのですが、捨てる前になぜそのポイントカードのポイントを貯めないのか?使わない理由を考えることで、逆にポイントカードによる効果的な集客方法が見えてきます。
ポイントカードを活用する本来の目的とは?
ポイントカードを配れば、ポイント目当てにお客さんが来ることを期待して、お店ではポイントカードを配っています。一方で、お店にとってポイントカードを使われると売り上げが落ちます。そこで、できるだけお店が損をしないように、かなりの金額を利用しないとポイントが溜まらない仕組みになっているポイントカードもあります。しかしお客さんは、お店の意図を敏感に感じるものです。なかなかポイントが溜まらないポイントカードであれば財布の奥にしまい、時間が経てばポイントカードがあること自体忘れてしまいます。忘れてはいけないことは、お客さんはお店の売り上げに貢献したくて、商品を買っているわけではないと言うこと。自らが客の立場になれば分かるはずなのに、立場が変わると自分本位の考え方が優先してしまうものなので、まずはポイントカードを利用してお客さんに来て頂くことを目指すべきでしょう。
ポイントの提供だけでは来店目的として弱い!
何か達成したい目的があるからこそ仕組みを考え取り入れるわけですが、ポイントカードを活用する目的は間違いなく「集客」であるはずです。であるならばポイントカードは、一人でも多くのお客さんにお店を利用してもらうことに的を絞った仕組みにするべきです。
例えばレストランで10,000円分利用すると500円割引になるポイントカードがあるとしましょう。割引率は5%なのでけっして悪い割引率ではありません。ただし平均的な客単価を2,000円とすると5回利用しないと割引が受けられません。常連客であれば、ポイントを貯めようと心がけるかもしれませんが、ポイントカードの本来の目的は、特に初めて訪れたお客さんにリピートしてもらい、固定客(常連客)になって頂くためのものです。いくら6回目の利用で割引を受けられるとしても、よほど料理が美味しかったり、スタッフの印象が良くなければ、ポイントが貯まるという理由だけで、再び訪れる強い動機にはなりません。ポイントがたまるだけではお店を訪れる理由として弱いのです。
次に訪れる理由をその場で提供する!
ポイントがたまるだけではお店を訪れる理由として弱いのであれば、ポイントを貯めるという発想自体を捨てて、ポイントを貯めるのではなくお店に訪れた時点で、次にお店を利用する理由を提供してしまうという発想もあります。例えば割引券がその一例です。お会計を済ませた時に、次回使える割引券を渡してもいいのですが、ただ割引券を渡してもお得感がないので、また利用したいという強い動機にはなりません。
一方ポイントカードは貯まった時の達成感があります。努力して貯めた以上、必ずお店を利用してポイントを使おうとする強い動機になります。そこで割引券をただ渡すのではなく、例えば1,000円利用のたびにスタンプが押される枠を2つ程度確保して、たった一度の利用でもポイントがいっぱいに貯まれば、普通に割引券をもらうより満足感とお得感が得られるので、またお店を訪れる強い動機になります。
集客以外にもう一つ重要なポイントカードの役割
ポイントカードにせよ割引券にせよ、再びお店を利用してもらうための理由を提供しても、次の来店が一年後だったり二年後では意味がありません。ポイントを提供するときにお客さんから予約を得なければ、本当の意味で来店につながったとは言えません。ただし、さすがにその場で具体的な日時まで決められるものではないので、ランチの割引なら2週間以内とか、ディナーであれば一か月以内など、その割引に期限を設けることで次の来店を促します。期限を設けることで「もったいない」「使っておかないと損」という意識が働き、より強くお店を覚えてもらえることになります。
人は時間が経てば経つほど記憶が薄れます。仲間や会社の同僚と食事へ行く、飲みに行くとなった時に、記憶に新しい最近行ったお店が必ず選択肢に入ります。ですから常にお客さんの記憶を上書きするように、お客さんとの接点を持ち続けることで、新しい記憶としてお客さんの記憶に残り続けることができます。ポイントカードの期限には、来店を促すことでお客さんの記憶からお店の存在を消さないための手段であるとも言えます。
お客さんが毎日訪れてしまうポイントカードの工夫
武井咲のCMでおなじみの「洋服の青山」は、ポイントカードへ面白い工夫を施しているので紹介します。最近ではポイントカードをスマートフォンアプリとして提供しているお店が増えましたが「洋服の青山」のアプリは、お客さんをつなぎとめるために上手い工夫が施されているので、つい毎日アプリを立ち上げてしまいます。
その上手い仕組みとはポイントを付与する方法です。一般的にポイントはお店で商品を買ったときに金額に応じて与えらます。また無印良品のように商品を買わなくてもお店に行けば「ご来店ポイント」がもらえるサービスもありますが、何れにせよ実際にお店へ足を運ばなければポイントは与えられません。しかし「洋服の青山」のポイントは、お店での買い物はもちろん、一日一回アプリを立ち上げればポイントが与えられます。お店に行かなくても自宅でアプリを立ち上げれば、どんどんポイントが貯まる仕組みです。
この仕組みの上手いところは、ポイントを貯めるために毎日アプリを立ち上げるので「洋服の青山」というお店を忘れることありません。無印良品のようなご来店ポイントもお得感はありますが、お店の近くに行っても、アプリの立ち上げを忘れてしまうことが多々あります。一方で「洋服の青山」のポイントは、自宅や移動中のほんの10秒程度の時間でポイントがもらえるので、つい毎日アプリを立ち上げてしまいます。客にとっては商品を買わなくても、お店に行かなくてもポイントが貯まることで割引を受けられるメリットがあり、またお店にとっても、お店を忘れることなく覚え続けてもらえ、しかもポイントを付与することで優先的に来店してもらえるメリットがあります。
スマートフォンならではの仕組みであり、一方でスマートフォンにしかできない仕組みではありますが、お客さんの記憶からお店を消さないための仕組みとして、面白いスマートフォンの活用事例であると言えます。
記事のまとめ
- お客さんは店の売り上げに貢献するために来店するのではない。
- ポイントカードを作っても、ポイントを目的にお客さんが訪れることはない。
- 付与したポイントには期限を設けることで来店していただく強い動機となる。
- ポイントカードはお店を忘れないように覚えていただくためのツール。